まずは畑の実習から。春の作業の第1弾といえば、ジャガイモの植え付けからスタートです。つくし農園の実習畑では、今年はキタアカリ、アンデスレッド、サヤアカネの3種を用意しました。キタアカリとアンデスレッドは、数年間作り続けている定番品種です。男爵やメークインなどの他の品種に比べ、例年安定して収穫しやすい種類でした。(もちろん、年により、区画により、不作の場合もあります。) サヤアカネは新しい品種で、北海道などで無農薬農家や無肥料農家で作られているとの噂を聞き、今年から試してみることにしました。
植える種芋によって、前処理をしていきます。比較的小さな種芋はそのまま土の中へ、150gを超えるような大きな種芋は、芽が2つ以上残るように切って、切り口を天日で乾燥させるか草木灰をつけてから植えていきます。草を刈り、土を掘り、モグラの穴を避けつつ、種芋を置く作業を始めていくと、いよいよ春がやってくるなあと感じます。そうそう、芋を植えたら、目印の棒を立てて、どこに植えたか分からなくならないようにご注意を。これ、自然農あるあるです。
大きな種芋は切りましょう 草を分けて土の中へ
続いては葉物野菜の種まきを。春のスタートにはまず、カブや小松菜など、育てやすいものから始めるのがいいでしょう。野菜の種まきには主に2種類の方法があります。ざっくり言えば、「筋播き」と「点播き」。豆類や果菜類など、株が大きく育つものなら点播き、葉野菜など、密に播いて間引きしながら育てるものは筋播きで育てることが多くなります。今回実習で播種した小松菜は、筋蒔きで行うことにしました。
まずは、種を播く箇所を一列に草刈りします。種を播く幅(10cmほど)よりも少し幅広く(倍以上)草を刈り、次に鍬などで表土を削ります。これは昨年に落ちた雑草の種を避けるため。これから播く野菜の種と同じ場所に、雑草の種が残らないようにという気配りですね。削った土は、雑草の種もありますが、昨年の様々な畑での蓄積が重なった大事な土でもあります。本当は削りたくないけど作物の為に少し土をどかすという人間の性に、チクリと胸が痛くなります(おおげさか?)。削った土は、少し多めに草刈りしておいた、播き箇所の隣に寄せるのがいいでしょう。種を降ろすところに宿根草の根があれば、鎌の先で根切りをして、でこぼこがあれば軽く均し、種を均等に播いていきます。播き終わったら、次に土を被せます。
実習では、川口由一さんにならっての、種の少ない土を播いた種の上に振りかけるやり方と、鎌の背などで土を引っかいて土の間に種を落としていくやり方の2種類をやってみました。どちらも、土と種をくっつかせて、発芽しやすい環境を整える作業です。最後は、自然農独特のひと手間、草被せを行います。種まきしてむき出しの土は、乾燥や、今の時期なら凍結に無防備にさらされます。種が発芽する条件は日光、水分、温度がメインです。草を適度に被せることで、過度の乾燥を防ぎ、適温を守り、そして適度に日の光も届くようにしてあげます。この時期は、被せる青草が少ないので、枯れ草などを利用するのもいいでしょう。
実習後の自由時間には、プレーヤーさんは各自の区画でさっそく農作業。共同購入したジャガイモや、思い思いの野菜の作付けを進めてまいります。今年から新しくスタートした聴講生コースの方も、今日から農園始め。雑草屋の畑に移動して、ジャガイモの植え付け作業をたっぷりお手伝いいただきました。
午前の共同作業は、近隣農家さんとの境界の、竹柵の直しを行いました。隣接する農家さんは、あくまでも「ご好意」で、われわれの自然農畑に除草剤などを「おすそわけ」してくれることがあります。口でお伝えしても、態度で表しても、なかなか長年身についた「雑草憎し」の魂は消えないもの。草刈りには気をつけているものの、どうしても除草剤を「おすそわけ」されてしまうことがあるのです。これまでの数年は、竹の柵に麻布をカーテンのように張り、簡易な薬除けを作って来ました。圧迫感もなく、自然素材で土に還るため、除草剤がこの境界から入らないようなメッセージとしての対策でした。
そこで今年はもうひと捻り、逆転の発想をしてみようかと検討中。柵で防ぐのではなく、花壇のように綺麗な花やハーブ類を目に付くようにあからさまに育てることで、「除草剤散布したら悪いな」という気持ちになってもらえないかという、「花で懐柔作戦」です。種から育てたのでは、花が咲くまでに除草剤を掛けられてしまうかもしれないので、既に花が咲いているポット苗を植えて、素敵な花で理解してもらおうという試み。自然農の農園にふさわしい、可憐で、派手派手しくなく、しかもお値段お手ごろな花の情報、皆さんからも募集いたします♪
当日の共同作業としては、境界としての竹柵の立て直しを行いました。1年土に挿して折れかかっている竹竿を抜き、巻き尺で等間隔に計り、スコップと木槌を使って、竹ざおを打ち込んでいきました。境界はできたので、4月に向けて着々と花壇化計画を進めていきたいと思います。
午後は14時から田んぼ実習をスタート。まだまだ水が多い今年の冬の水田、氷を張るような厳寒期は過ぎましたが、それでも冷える日は朝に霜柱ができるほどのこの時期。先月の集合日に修復した畦道も、霜柱が解けて滑りやすいので畦を崩さぬように慎重に歩きます。実習では、4月以降の種まきシーズンを控えての、苗代準備の作業を行いました。苗代とは、お米の種を落とす苗床のこと。実際の種まきは暖かくなってからですが、土台となる苗代は事前に準備しておいたほうが、忙しい春の仕事が一つでも少なくなります。また、事前に作っておくことで、土をなじませ、苗代に住まう微生物たちが作りたての土よりも少しでも増えてくれるようになります。微生物のことを考慮すれば本来は1月〜2月にしておくべき作業の一つでもありますが、水位が高く先延ばしにしていたこの作業、ようやく3月の実習で行うことができました。
実習で行ったのは、昨年も利用した苗代の再準備。苗代の寸法(つくし農園では、一区画1m×1mほどで足ります)を計りなおし、その大きさに土を盛り直していきます。水かさが増えても沈まなく、水が少ない年でも枯れてしまわないような高さに作るのは毎年の悩みどころ。例年で言えば、水田の深さにたって踝(くるぶし)が十分に隠れるような足首ほどの高さに苗代を作るのが吉のようです。寸法を取った苗代予定の周囲をスコップで掘り、その掘った土(泥)を上げて、それを苗代の大きさと高さに仕上げていきます。苗代は、蒲鉾状のなだらかな傾斜にせず、できるだけ平らな台地状になるように作ります。ポイントは、真ん中を少しだけ低くつくること。芽を出した後の苗は、水を求めます。苗代の周囲は水分が取りやすいですが、真ん中は幾分渇きがちになります。蒲鉾上に中央が高いとそれだけ水分も周囲に流れやすく、苗の育ちに差がでてしまうことがあるのです。稲は水を求める水草の仲間ですから、苗の時に適度な水気が給されるように苗代を作ることは、つくし農園のように水の管理を自然に任せる田んぼではポイントの一つとなります。
苗代の形が整ったら、4月〜5月の種降ろしまで播き床を養生します。土を動かして作り上げた苗代は微生物の活動量が少なくなっていますので、米ぬかなどを少々振りまいてあげたり、稲藁を上に被せて温度や湿度を保ち、種まきの時を待つことになります。
田んぼ実習を終え、共同作業は畦道の補修第2弾にとりかかりました。2月の集合日で3分の1を終え、残すは3分の2は、当日と、2週間後の臨時集合日との2回に分けて作業することに。皆さん手際よく草刈り、畦道直し、整形、と作業を進めて、今回も見事に畦道が整いました。
集合日の作業が終わり三々五々の夕方を過ごし、夜はいよいよ懇親会です。つくし農園のおなじみの中華料理店にお邪魔して、2014年度の顔合わせの夕食会を行いました。いや、宴会ですね。今年のつくし農園は、どうやら酒豪が集結している模様(笑)。美味しい食事も嬉しいですが、とにかくアルコールが進みます。たっぷりと飲み、ゆっくりと話し、雑談も、自然農談義も交えつつ、今年の農のひと巡りを思い描きながらの、楽しい宴になりました。お泊りされたプレーヤーさんとはさらに我が家で2次会も。とっぷりと夜更けまで、語らいは続いたのでした。
あらためまして、今年度もどうぞよろしくお願いいたします。そして懇親会に出られなかった方も、また次の機会を楽しみにしております!
・2014年度の集合日予定カレンダー ならびに募集要項
・つくし農園の見学・体験について
・自然農について